これはよく晴れた休日の話である。

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「……なんだ? 一体」  渡された着替えといい……詳しい事情は分からないが、ここはとにかく言われたとおりにするしかない様だ。 「はぁ……」  本当は今日、もっと『昼寝』をするつもりだった。  多少は出来たが本当はあのポカポカとした温かい日差しを感じながらするのがいいのであって、そうでなければ意味がない。 「でも、明日の事を考えるとあまり昼寝してもよくねぇか」  ボソッと呟きながら、俺は歯ブラシを取り出した。そして、母さんから「遅いっ」と小言をキッチリもらい、両親に連れて行かれた先に待っていたのは……。 「えっ」  大きく『お誕生日おめでとう!』と書かれた文字のパネルと部活の仲間たちの姿だった。 「えっ……こっ、コレ……は、一体??」  確かに、父さんの運転する車が向かっていた方向は学校だった……が、まさかこんな準備がされているなんて思ってもいない。 「ほら、誕生日だろ?」 「いや、そう……だけど」  俺が副部長を務めている部活は、部員の誕生日は毎回盛大に祝っている。でも、それは代々女子マネージャーが計画をし、実行していた。  ただ今年はその女子マネージャーがおらず、俺が計画の中心になって行っていた。  それに、俺の誕生日なんてちょうど入学式が終わって新しい部員が入部してくるぐらいの時期だ。  だから、俺の誕生日なんてスルーされて何事もなかったかの様にされるものだとばかり思っていて……まさか、こんな盛大に祝われるとは思っていなかった。 「ほら、いつも先輩が中心になって祝ってくれるじゃないですか」 「そうそう、どうせやるならそれくらい……いや、それ以上にパーッとやろうぜ! って話になってな」 「そっ、それは分かったけど……なんで父さんと母さんも?」 「それは……せっかく休日だし、ご家族の方にも協力してもらおうという話になりまして……」  一人の後輩が、オズオズと説明してくれた。  チラッと二人を見ると、ワザとらしく視線を外したところを見ると……どうやら父さんも母さんもこの『サプライズ計画』に一枚かんでいた様だ。 「でも大変だったんだぜ?」 「ん? 父さんや母さんが俺にバラすかも知れない……とか思っていたのか?」  確かに、父さんはともかく母さんは隠し事が苦手だ。 「いや? ご両親の心配よりも……部長が大真面目に言うんじゃねぇかって方が心配だったな」 「…………」  部員たちは隠し通せる自信があったらしいが、どうやら部長は……大真面目に俺に言ってしまう危険性があったため、間際に伝えたらしい。 「……ムッ」  でも、この反応を見る限り、部長的にも俺に隠し事をする事にかなり抵抗があったみたいだから、部員たちの判断は間違っていなかったようだ。 「……ほら、手を出しなさい」 「え……? なっ、何?」  母さんに言われるがまま手を差し出した。 「私たちからの誕生日プレゼントだ。店中探しても見つからないから、大変だったんだぞ?」 「あっ……ありがとう」  父さんも母さんも仕事終わりや休日などを使って色々なショッピングモールなどに行って探し回ってくれた様だ。  でも、結局いくら探し回っても見つからず、どうしようもなくなり、途方に暮れていたところに父さんの会社の人から「通販サイトで探してみたらどうですか?」と助言を受け、なんとか見つけたらしい。 「そっか……」  つまり、今日届いた『宅配便』は俺の誕生日プレゼントだったのだ。 「……ありがとう。父さん、母さん」  今日は『昼寝日和』なのに、予想外の事ばかりでツイてない……と思っていたが、どうやらみんな今日は絶好の『サプライズ日和』だと思っていたらしい。 「おっ、見ろよ。夜桜だ」 「うわー」  部員たちは続々と外に出て行った。 「すげぇ……」  空を見上げると……そこには、夜のキレイな星空に心地よい風と『桜吹雪』が舞っていた。 「…………」  みんなはその『夜桜』に感動していたが、俺は色々あったせいか……いや、昼寝をしていたせいかも知れないが……どうやら今日は、すぐには寝られそうにない。 「せっかくのいい景色だしな」  そして、俺は「このキレイな景色を忘れることはないだろう」と自宅から持ってきたカメラで写真を構え、シャッターを切った……。 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 「はぁ……ダルイ」 「ゴラァ! シャキッとしろ! シャキッと!」 「だっ、大丈夫か?」 「あっ、ああ。悪い。……はぁ」  ただ次の日は、寝不足で絶不調だったのは言うまでもなく、しばらくは『昼寝を禁止』にしようと俺は心に誓ったのだった――。
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