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「もしもし……母さん?」
「あっ! やっと出た!」
案の定、母さんはかなりお怒りの様子だが、俺としてはせっかくの『昼寝気分』を害されて逆に怒りたいところである。
「全く……。電話が鳴っていたら出なさいよ。何していたの?」
「……昼寝しようと思っていたんだよ!」
俺にも『予定』というモノがある。それをそんな言い方をされてしまうと、さすがに腹が立つ。
「あっ、あらー……」
ここまで言えば、母さんにも伝わったようだ。あまり人の事を気にしない母さんも、さすがに俺を気の毒に思ったらしい。
「はぁ、それで……何?」
「いっ、いや……昼寝するつもりだったのなら……うん、それならいいわ。特に外に出る予定はないのよね? それじゃっ」
結局、母さんは要件を伝える事もなく、そのまま電話を切った。
「……?」
何か要件があったはずだったのだろう。だから、わざわざ固定電話にまで電話をかけてきた。
「はぁ……」
まぁ……なんにせよ、もう一度電話をかけるのも面倒……ではなく、仕事の邪魔になってはいけない。
納得したならそれでいいだろう。チラッと見た時計は午後の一時を少し過ぎている。
昼食を食べ、昼寝の準備をしたにも関わらず今の電話で昼寝をする時間がどんどん遅くなってしまう。
どこかで「あまり『昼寝』をし過ぎるのはよくない」と聞いた事があったが、今。それは関係ない。
とにもかくにも俺は『今日!』この素晴らしい『昼寝日和』の中で寝たいのだ。下手をすれば、このまま昼寝をする事なく夜になってしまう可能性もある。
それは避けねばならない事態だ。
「ふぅ」
今度こそ……と自室に戻り、布団をかぶり、目を閉じた。
「ん……?」
今度は家の前に何やら『車』が止まったような気がした。しかも、すぐに家のチャイムは鳴らない。
何やら……いやーな予感がする。
二階の窓からチラッと外の様子を覗くと……そこには宅配業者のトラックが止まっていた。
「…………」
まさか、俺の家ではないだろうか……そうなると、また『昼寝』の時間が削られる……。
俺がそんな風に思っているなんて荷物をおろそうとトラックから降りてきたお兄さんは知らない。
そうして、俺の嫌な予感は当たり。荷物を片手に颯爽と走った宅配のお兄さんはそのまま俺の家のチャイムを鳴らしたのだった。
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