1冊のノート

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「かなえてやるよ」 「.......え?」 「結婚しよう」 びっくりして見上げると、すごく赤い顔をした椋くんがいた。 「.......え?椋くん、いいの?」 「芽々は、俺じゃ嫌か?」 「そんなこと.......っ!」 あたしは思いっきり首をブンブンっと横にふる。 「振られたのは、俺だぞ?」 「え?」 「どんだけお前のこと好きだったと思ってんだよ。カッコつけてもう忘れたとか言ったけど、忘れられるわけあるかよ」 もう一度グイッと引き寄せられる。 「好きだ、芽々。結婚してほしい」 「椋くん、あたしも好き。大好き」 「結婚の返事は?」 「よろしく、お願いします」 そう返事をすると、抱きしめられている腕の力が増した。 「よーし、幸せな家庭つくるからな。パパ仕事頑張っちゃうぞー」 お腹に向かって、声をかけている。 さっきまで、こんなふうに幸せな空気が流れるなんて、思ってもいなかった。 大好きな人と幸せな家庭を築く。 きっと、これはお母さんが1番見たかった光景だろう。 「報告にいくよ、お母さん。ありがとう」 お母さんのおかげで、危うくこの幸せをなくすところだった。 このノートに出逢えた奇跡に感謝。 お母さんに感謝。 1冊のノートに救われた幸福に。 これからずっと、幸せに笑っていようと誓った。 -Fin-
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