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会話の空気も暖かくなってきたと思ったのか、バーテンダーはさっき詮索した理由を男に話す。
県外客なのは雰囲気で分かる。仕事ですかと聞いてはみたがそんな感じではないのも分かる。何か漠然と人を待ってるような。本当にいつもは詮索じみた会話はしない。それがこの仕事の大事なところだから。でも貴方には何故か聞いてしまったと。
男はバーテンダーの話を聞き終えると、迷った顔をして、ため息混じりに話し出した。
「まあ、観光というよりは、好きな人の地元だから見てみたかったというのが本当です」
グラスの残りの酒を飲み干し続けた。
「いなくなったんですよ。そう消えたんです。今でもいるような感覚なのに、すぐ隣に温もりまで感じるのに。いなくなってしまったんです」
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