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「う、嘘?」
「嘘じゃないです。私も…雀宮さんしか見えてないです。」
「……。」
「鼻血、出てますよ。」
「うん、これは無視してくれて良いよ。」
どういう事だ。
状況が全く呑み込めない僕の鼻に、自分のハンカチを押し当てて微笑む鷲崎さん。
何この萌えシチュエーション。
鷲崎さんが僕に微笑んでる。
鷲崎さんが僕に優しい。
「ちょっと待って、整理させてくれる?」
「はい。」
「鷲崎さんは今日夜鷹織と結婚の話をする為にこのホテルに来てたんだよね。」
「はい?」
「え、違うの?」
「当たり前じゃないですか!どうして私が織と結婚するんですか?だって織は私の双子の兄ですよ?」
…双子の兄?
はぁああああああああ!?!?!?!!?
「え…じゃ、じゃあ夜鷹ご夫妻は…。」
「はい、私の両親です。」
「……待って、えっと…でも苗字が違って…。」
「それは、夜鷹の娘という七光りだけで評価されたくなくて、母親の旧姓を借りていたんです。」
「……。」
「自分の実力だけで服のデザインをずっとしたかったんです。いつか絶対に自分のデザインした着物を発売したいって思っていました。夜鷹の力を借りず、私のデザインだから好きだと言って欲しかった。」
明かされる事実は、どれも僕の知らない彼女の事ばかりだ。
こんな貴重な情報、録音でもしておけば良かった。
この期に及んで、ストーカーな性分を発揮してしまう。
「そして入社試験の時、私の着物のデザインを初めて褒めてくれたのが雀宮さんでした。」
「それは…鷲崎さんのデザインが単純に美しくて…。」
「それが嬉しかったんです。今までずっと夜鷹の人間という目で見られてきて自信を喪失しかけていた私は、雀宮さんのその一言で救われました。」
「……。」
「気づけば雀宮さんの事が好きになってました。」
誰がこんな展開を予想しただろうか。
生きてて良かった、本気でそう思う。
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