求愛其の一/愛しき鷲は、優美なり

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一回、二回、三回…。 瞬きを繰り返すだけの僕に、彼女は更に美しい顔を歪める。 「ずっと前から思ってたんです、視線を感じるなって。四六時中、会社にいても家にいても常に視線を感じるんです。さっきから独り言を呟いていますけど、奥さんって何の事ですか?どうして私が朝6時に起きてサンドイッチを作った事知ってるんですか?もしかして視線の犯人って…貴方ですか?」 いつも物静かな彼女が、ここまで言葉を連ねるのは非常に珍しい現象だ。 思わず記念に録音したくなるくらい、心地良い可憐な声がいつもより長く聞けて僕の耳はとても癒された。 「早く答えて頂けますか。」 急かすような一言。 彼女は手に持っていた残りのサンドイッチを口の中に放り込んで、大好きな駅前の紅茶専門店で購入したダージリンティーを飲んでいる。 いつもはアールグレイばかりなのに、今回は気分を変えたくてダージリンにしたらしい。 彼女の事は全て把握している。 そして、このダージリンが気に入った事も表情を見ればすぐに分かる。 「いずれ結婚するのだから奥さんと呼称している事はさほど問題ではないよ。」 「大問題ですよ。だって私と貴方、まともに話したの今日が初めてですよね、好き合ってもいなければ交際にさえ至っていない、それなのにいずれ結婚するなんて全てを飛び越えた発想ですね。」 「そうかな?お褒めの言葉どうもありがとう。」 「褒めてません。」 また一口、紅茶を啜る彼女を見て思う。 嗚呼、紅茶になりたい。 あんなにキスされて、体内に飲み込まれて、あの紅茶は幸せ者だ。
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