リクノコ島奇談

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 「大人がすれば、わたしたちもして良いわけ?」  「ああ言えば、こう言う女だな」ファンは舌打ちをすると、下でぐったりと伸びているトーマスを見て続ける「トーマス、運が良い男だな。女に庇ってもらってよ。男だったら自分で何とかしてみろ」  風呂に入って、針にいこうぜと同級生を引き連れながら、ファンは食堂を後に学生寮の浴場へ向かう。 ローマンド本土の大衆浴場は、蒸し風呂に、水風呂、それから熱いお湯の風呂があり、床暖房まで設備が充実している。風呂あがりには牛乳が有料で飲めるほか、食事のサービスも付いている。ローマンド国王が娯楽と快楽に金を使ったことで、本土の娯楽施設は豪華だが、本土から離れたリクノコ島には資金が回らなかった。 それでもリクノコ島学校では、本土に及ばないまでも生徒たちに都会と変わらない暮らしを送らせようと、小規模な浴場を設けている。 こじんまりとしたサウナや水風呂、熱湯風呂があり生徒たちはそこで授業てかいた汗を流す。 浴場に入れば、お湯の張った浴槽からモクモクと立ち上る湯気がファンやトーマスたちを出迎える。湯桶から汲んだお湯を背中にかけると、体が芯から温まるような熱さが伝わってくる。  「学生寮の湯は気持ちいいな、早く体を擦って湯船に浸かろうぜ」  ファンはヘチマ製のボディウォッシュタオルでゴシゴシと体をすり始めた。
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