リクノコ島奇談

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 「ぼくは将来は冒険家になろうと思ってるけど、ここにいたら、最終的には剣闘士奴隷になるのがオチだね」  チャールズは体を流し終えると、椅子からゆっくりと立ち上がる。  「オレはスパルティコのような男になりたい。ローマンドじゃあ無敗の剣闘士だぜ」  先に湯船に体を浸けたファンがトーマスとチャールズを嘲笑うかのように、そう言った。 スパルティコはローマンドの歴代剣闘士の中で、無敗の戦士や、最強の闘士と謳われる人物で、リクノコ学校で教えている護身術の開祖とも言われており、尊敬する人物もローマンドでは多い。  「俺はクラウド・グラバーだ。スパルティコとは親友でライバルだったんだ」  ファンの声高に、夢を主張する。  クラウド・グラバーもまた、スパルティコと並ぶ護身術の達人と言われており、ローマンド本土のコロシアムでは、肖像画を飾られている。  「どんな夢でも、目標は目標だ」  トーマスは広い大理石の湯船に足を浸ける。爪先からお湯の熱さが伝わってくると、足が温度に慣れるのを待ってからゆっくりと下半身を浸ける。 リクノコ島産のレモンをふんだんに使ったレモン湯だ。レモン特有の柑橘類の香りがふんわりと漂い、うっすらと黄色く濁ったお湯が足元から体をポカポカと温める。
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