リクノコ島奇談

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 ウェアラットはトーマスの攻撃から逃げ回るわけでもなく、次から次へとトーマスの体をよじ登って来る。  「先生、かずが多すぎます!」  「的の小さな相手に大振りしてどうする。仁王立ちは攻撃してくれと言ってるようなものだ、半身になってこちらも的を絞れ、出来るだけ短い動きで攻撃しろ」  「そんなこと言われても......」  トーマスは、ルイのアドバイス通りに動こうとするが身動きがとれない。  「言い訳は敗者のすることだ。勝ちたければ黙って戦え、実戦は無駄口叩いてる暇はないぞ、トーマス!」  リクノコ島学校の授業はモンスターとの実戦訓練で行われる。 戦闘経験のないローマンド公国の一般市民がモンスターから自分で身を守る術を身につけるために設立された学校なので、実戦で身につけるのが一般的な授業となる。 もちろん、脱落は死を意味するため、授業をまともに消化できた生徒も少ないが、生きたまま脱落するトーマスも珍しい。  「お前たち、離れろって!」  トーマスは走り回りながら、体を這い回るウェアラットたちを払いのけようとする。
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