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リクノコ島学生寮の食卓では、レンメル麦という穀物から作られる、丸くてたいらなポカッチャというものに、少量のニンニクと塩がかけられた料理が出された。飲み物は牛乳だ。
もくもくと煙を出し、レンメル麦の香ばしい香りを漂わせるポカッチャと牛乳を囲み、生徒たちはポカッチャに手を付ける。ほのかなニンニクの風味とほど良い塩加減、サクサクとした皮とふんわりした生地の食感が生徒たちの舌を楽しませる。
「食堂のおばちゃんのポカッチャは、牛乳と合うんだよな」
ファンは牛乳をぐいと口に含む。
「ポカッチャはローマンドの伝統料理だからね。おばちゃんはね、うちの卒業生の人から習ったのよ。休みの日にはこれに蜂蜜をたっぷり塗ったげる」
ローマンド本土では、ポカッチャは奴隷が焼いて出している。蜂蜜を塗ったり、フルーツを出したりするのは本土の上流階級に限られるのだが、リクノコ島学校では、生徒たちの栄養バランスが考慮され、授業がない日のみ少しだけ食卓が豪勢になる。
「休日が楽しみだわっ!」
トーマスの同級生の女子生徒、アメリア・イアンハートは静かにポカッチャを頬張る。
「そうだね、アメリア」
トーマスは頷きながら、ポカッチャを食べるアメリアを眺めた。ここに入学してからずっと気になっていた女子生徒だ。何時かデートしてみたいとトーマスは思っていたが、運動もダメ。勉強もダメなトーマスは声をかける自信がない。
「おいトーマス、なにアメリアに声かけてるんだよ。反省会があるのを忘れてないだろうな!」
ファンはトーマスを怒鳴りながら、ポカッチャを皿から奪う。
「そんな訳は......それはボクのポカッチャだ」
「ボサッとしてるお前が悪いんだよ。ほしけりゃ力づくで奪い返してみな」
トーマスから強奪したポカッチャをぶらつかせながら、ファンはトーマスを挑発する。
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