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「ボクのだぞ、返せっ!」
トーマスは、ファンに強奪されたポカッチャを奪還しようと席を立ち、ファンの座る椅子に駆け出すや取っ組みあいになるが、腕力で負け床に倒されてしまう。
「ネズミ一匹に勝てない奴が、喧嘩で俺に勝てるはずがないだろ」
トーマスの腹の上に馬乗り状態となったファンは、トーマスの顔を見下ろしてニヤリと余裕の笑みを浮かべる。
ローマンド本土の大人たちが、娯楽目的で始めた格闘技では「マウントポジション」といわれる体勢。馬乗りにされる前に脚を挟んで「ガードポジション」という体勢をとれば対処できるが、トーマスのように完全に馬乗りにされると、出来ることは限られている。
「クソ。離れろ、ファン!」
床の上で足をバタバタさせて、トーマスは必死に抵抗するが、腹の上で完全に体重をコントロールされ、うまく体を動かせない。
「俺をどかしてみろよ、ヘタレ!」
ファンが上からそう叫ぶと、食堂の生徒たちがコロシアムの観客のようにワイワイと騒ぎ始める。親指を下に向けて「トーマスを殺せ」の合図を送る。
これではクラスぐるみの虐めだと、トーマスは訴えたかったが、本土の大人たちは生徒たちがこの学校でどんな生活をしているのかを知らない。誰も助けてはくれない。生き残りたければ自力でどうにかするしかないのだ。
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