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「まあ、いいや。それで、今日はどんな法要をしてくれるのかね?」
と、人の部屋で寛ぎなが法要を強要する彼女に思わず溜め息が漏れる。
「今日は、お昼にミドリの家で四十九日の法要をするんだよ。だから夕方からは空いてるけど」
「お。じゃあ、夕方はお出掛けしよう」
「いいよ」
鼻唄を歌いながら、僕が横になっているベッドに飛び込んで来た彼女に重さはない。
そういう、ふとした瞬間に僕は彼女が幽霊だということを実感するのだった。
「もう四十九日か……」
ポツリと呟いた彼女の声は、窓から入り込む穏やかな風に乗って僕の短い前髪を揺らす。
「あとは、いつ戻って来られるの?」
「おや? まさか、私が戻って来るのを楽しみにしているのかね?」
「……別、別にそういうわけじゃ」
と、僕はニタニタといやらしい笑みを浮かべる彼女から目を反らす。
「あと一回。百日が最後になるよ」
__最後。
彼女が幽霊だという事も。いつかは、また別れが訪れるという事も。頭では、しっかりと理解はしている。
だけど、だからといってすぐに別れの言葉を言える程、浅い間柄でもない。
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