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第1章 「拒否された招待」
「今のうちに早く車の中へ!!」
綺麗だ……
自分が命の危険に晒されているのにも関わらず、そう感じられずにはいられない。
月夜に照らされた白い髪、血に飢えた赤い目、無表情で肉を裂く精神力…全てが見惚れてしまう。
8人いた凄腕のボディーガードはもう1人しかいない。相手はかなりの腕のプロだ。大金で雇った殺し屋なのだろう。その彼らが恐怖を露わにし、撤退する為の抗戦に入っているのが分かる。それ程までに後から来た部外者は強い戦闘力を有していた。
私は言われるがまま車に乗り、その場を後にした。後ろを見るとほとんどがボロ雑巾のようにやられていた。
3ヶ月後
「……断る。」
埃一つない綺麗な一室で白髪の男が嫌悪感を露わにしている。反対に対する椅子に座った金髪美女は終始和やか笑顔を向けている。
女
「駄目です♡これは決定事項です。覆りません。」
足を組み直し、より一層の笑顔を見せる。
女
「私は只の理事長じゃないのですよ。ここは一部のお金持ちのお嬢様のみ入れる白桜鶴女学院の理事長です。政府関係者との繋がりがありますから。権力万歳です♡」
男は苦虫を噛んだような表情を見せる。
男
「…………それにしては随分と若いな。」
理事長
「ありがとうございます♡まぁ、これでも27歳なんですけどね。世間ではもうおばさんの部類でしょうね。」
微笑むような笑顔に変わる。
理事長
「3ヶ月前から貴方の事を探してましたが…結構苦労しました。裏社会では一部のトップの人間しか知らない都市伝説だそうですね?【狂犬】…でしたっけ?目を付けられたら終わりという噂でしたね。そんな恐れられた伝説を探すのにどれ程頑張ったか知って頂きたいものです!それもこれも全ては学園のボディーガードをして頂く為なんですけどね。」
男
「……ご苦労なこって。それよりも…俺に殺される可能性は考えなかったのか?この距離なら1秒もいらない。」
男は無表情に睨み付ける。が、女は意に返さず少女のように笑う。
理事長
「それはあり得ません。貴方を初めて見た時から分かってました。あの日、逃げていく私達に見向きもしませんでした。あの後から今までで少ししか調べる事が出来ていませんが、貴方は死んで当然の人間しか殺してない。その場にいた目撃者や被害者には手を出していない。
なので、信頼出来ます。
私、人を見る目はあるんですよ。」
男
「………女狐か?あんたは?
…食えん女だ。」
理事長
「あら♡そんな可愛らしい動物に例えて頂けるなんて光栄だわ。」
男
「…………。」
理事長
「さて、ボディーガードをするに当たって貴方にはメリットがない。お金はいくらでも払いますが、それは貴方にとってメリットの内に入らないのでしょう。
なので、貴方に渡すメリットは強者との戦闘です。うちの学園はテロリストやプロの殺し屋がわんさか来ます。本当にウンザリする程に。なので貴方はそれによって死ねる可能性が高くなるでしょう。」
男
「…!?」
理事長
「これが貴方に渡せる最大のメリットです!どうか返事を頂けませんか?犬嶋陽介(いぬじま ようすけ)さん??」
犬嶋陽介
「……他人の言う事を聞くのはあまり好きではないんだがな…。」
理事長
「私の名前は月宮理沙(つきみや りさ)です。気軽に理沙さんって呼んで下さい。
これで他人じゃ無くなりましたね?」
満笑の笑顔を見せる。
犬嶋陽介
「……分かったよ、理事長さん。かなり不安だが、ボディーガードの件……引き受けるよ。」
そのまま扉を出る。
月宮理沙(理事長)
「……んもぅ!理沙さんで良いって言ったのに…」
ふくれっ面になる。
が…すぐに真顔になる。
月宮理沙
「……我ながら随分と酷い提案だったわね…。少し自己嫌悪に陥っちゃうわ。」
椅子から立ち上がり、窓へと移動する。
悲しげに空を見る。
月宮理沙
「………願わくばこの学園で生きる理由を見つけて欲しいわ。」
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