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なつことそうたは、七歳です。いつも笑っているかと思うとケンカをし、ケンカをしたと思うといつの間にか、また、笑っている、仲のいい二人です。
ある日、学校のプールの帰りに、二人はいつもの駄菓子屋さんに行きました。どこを見渡しても、一面お菓子、こども心をくすぐる昔懐かしの小さな駄菓子屋さんです。
入口のすぐそばにあるレジには、いつも優しいおばあちゃんがちょこんと座っています。
「ばっちゃん! ラムネ!」
「わたしも!」
「いらっしゃい。一人百円だよ」
二人は財布の中をかき回しましたが、どちらも困ったさんの顔です。
「なつこ、五十円貸して!」
「無理! ない! あー昨日、マンガ買っちゃったんだった! そーちゃん、五十円ある!?」
「なぜ聞く!? ねーよ!!」
「えー!! のーみーたーいー!」
「おれだって飲みてーんだよ! マンガなんか買うからだろ!!」
「そーちゃんだって、足りないじゃん!」
にらみ合う二人に、おばあちゃんは少し考えて、言いました。
「……ちょっとお財布の中、見せてくれるかい?」
それぞれの中身が、混ざらないようにきれいに並べられていきます。二人はケンカを忘れじっとそれを見つめます。
なつこの前には、五十円玉と一円玉が一枚ずつ。
そうたの前には、十円玉が八枚に、一円玉が五枚。
おばあちゃんは、なつこの五十円玉と、そうたの十円玉五枚を、そこからずらしました。
「これで、百円」
「おおーー!!」
「おばあちゃん、すごいっ!!」
「ちゃんと半分こするんだよ」
「はーい!」
お金を片付けて、ラムネを嬉しそうに受け取って公園へ走っていった二人を見つめ、おばあちゃんは、ふと思い出したようにつぶやきました。
「……あら、紙コップを渡すの忘れてたわ」
ちょうどその時、公園でラムネを飲んでいる姿を同級生に見られて、間接キスでからかわれるのは言うまでもありませんでした。
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