王子様がやってきました

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 王子は私を見つめ、ぼんやり考え事をしているようだった。  そして、ふいに、 「結婚ってなんだろうな」 と呟く。  そんな人類史上もっとも謎な問いをこんなところで呟かれても……。  此処には、15から眠り続けている世間知らずで、ぼんやりした娘と、その娘の世話をして、100年、世間から隔絶されていた面倒見のいい小悪魔しかいないのにっ。  王子は私を見つめたまま言う。 「そうだな、きっと。  ふたりで暮らして、子どもを産んで。  たまには子どもを連れて遠乗りに行って。  ……天気のいい日は川に行ったりして。  川に落ちた子を拾い上げたり」  待って、まず、釣りとかして。  なんでいきなり落ちてるの? 「今度はその子たちが結婚して、可愛い嫁をもらったり、嫁いでいったりして、孫を連れてきて。  ……子どもたちに城を任せて、そのあとは、ふたりで、ゆっくり暮らす。  そんなものかな、結婚って」  そんなものなのか、結婚って。  ただただ普通に暮らしてく。  ふたりで朝起きて、ご飯食べて仕事して。  またご飯食べて、少しふたりでその日のことを話して、ちょっと笑いあったりなんかして。  また寝て。  ただただ、その繰り返しなのだろう。  だけど……。
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