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そこで、王子は私の顔を見て、ちょっとだけ切なそうな顔をする。
「困ったな。
閉じ込められて暇だったから、リアルに想像してしまったぞ」
と言う。
そっと眠っている私の手に王子が触れた。
黙って、私の顔を見ている。
……私もです、王子。
あなたがあまりに平凡でありきたりの人生を、ただただ淡々と語るから。
やけにリアルに想像してしまって。
……想像してしまって、
涙が出る、と私は思った。
日々、ふたりで暮らし、語り合うだけのこれといって劇的でもない人生が。
なんだかすごく欲しかったもののように思えて。
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