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王子はパラパラと石塊が落ちてくる天井を見て言った。
「崩れかけているのか?
早く、この娘を連れ出さねば……」
いや、連れ出そうとしたから崩れかけてるんですが、と思いながらも、私の身を案じてくれていることがちょっと嬉しかった。
が、その瞬間、行動の早い王子は枕許のイバラも切っていた。
「迷いのないやつだな~」
と小悪魔が言ったとき、塔が大きく傾いで王子は剣を手にしたまま、私の額めがけて倒れて込んできた。
「ひーっ!」
と私は飛び起きる。
振り返ると、さっきまで顔のあった場所に王子の剣が突き刺さっていた。
こ、殺されるところだった……。
イバラを切るとき、足を怪我するんじゃないかとか。
塔が崩れる前に連れ出さねばとか言ってくれている人に……と思ったあとで、気がついた。
自分の魂が身体に戻り、目覚めていることに。
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