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「ああ、そういえば、命の危険があるときも勝手に目覚めるようになってたんだった」
と。
小悪魔の声は聞こえるが、姿は見えない。
その代わり、いつ間にか、窓辺にちょこんと昔可愛がっていたこぐまのぬいぐるみが座っていた。
振り返ると、王子が戸惑ったようにこちらを見ている。
王子がイバラを切るのをやめたので、それ以上、塔は崩れないようだった。
王子は沈黙している。
まだ沈黙している。
やがて、ゆっくりと王子はベッドを降り、
「見ず知らずの娘のベッドに勝手に上がり込んで申し訳ない」
と言った。
いや、あなた今、その見ず知らずの娘を勝手に連れ去ろうとしてましたけどね、と思いながら、ちょっと笑う。
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