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しかし、人間の身体に入って、間近に見ると、かなり格好いいな、この王子。
とか思ってしまい、緊張で目眩がしてきた。
ああ、王子でなくとも、格好いい人でなくともいいとか言ってたくせに、王子の美貌にクラッと来てしまい、すみません、と誰にともなく謝る。
「いきなり、こんなことを言って申し訳ないが……」
と言う王子も、さっきまでの威勢の良さは何処へやら、視線を合わさないし、かなりたどたどしくなっていた。
そのとき、窓辺にちょこんといたはずのぬいぐるみが、床の上にいるのに気がついた。
さっきより近くに来ている。
「私と……」
王子がまた沈黙する。
振り向くと、ぬいぐるみが、また近づいている。
「その」
ぬいぐるみがそこまで来ているっ。
王子っ、あなたの背後にっ。
しびれを切らしたぬいぐるみがっ、と思ったとき、王子が私の手を取り、言ってきた。
「突然で大変申し訳ないが。
私と結婚してもらえないだろうか」
と。
今、王子を後ろからどつきかけたぬいぐるみは、ふたたび、窓辺に戻っていた。
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