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ちょっと迷ったあとで、王子は私と目を合わせる。
どちらからともなく、少し笑い。
王子がそっと口づけてきた。
すると、今まで、ただ棘を突き出し、塔に巻きついているだけだったイバラが一斉に花を咲かせた。
「私はお前をキスで目覚めさせたわけではない。
私はお前の運命の相手ではないかもしれない――」
そう言う王子に私は言った。
「……誰が運命の相手でも関係ないです。
100年待って、私があなたを選んだのですから」
そう。
100年待ったからこそ、この人に出会えたのだと、今は信じたい。
この100年が無駄ではなかったのだと――。
「それにあの……」
と私は赤くなって言った。
「お、起きてるときでよかったです」
うん、と王子が微笑み頷いたとき、
「暖かい窓辺に置かれたら、溶けて消える気がするな」
と何処かから小悪魔の声がした。
「暗い地下倉庫にでも入れといてくれ。
いつかまた、それにとり憑くから」
と悪魔らしいことを言ってくる。
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