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「いいわねーさとしは。28にもなって朝の10時だというのにまだ寝てられて」
母、町子はさとしの部屋の前を通ると決まってこんな一人言を部屋に聞こえるように言って通る。
また始まったーー。
いつも母のその一言で目が覚めてしまう。
さとしの勤務は週5の昼12時から21時まで。
遅刻することなくフルで働いている。毎月の生活費はしっかり入れてるし、何の不具合もない自分に誇りを持っている。しかし目覚ましのように毎朝聞こえる母の一言がさとしのヤル気を損なう。
(正社員でないのがそんなにイヤかね〜)
さとしが働くバイト先は駅前のコンビニで、その辺のコンビニより客が多くて結構忙しい。ビジネス街でもあるから昼時の1~2時間は弁当や飲み物を買う人たちの行列が出来るくらい。近いという理由からこのバイト先を選んだ。
11時半過ぎに家を出ていくと向こうに丁度良い頃に着く。
「おつかれさまでーす」
さとしは上着を羽織り小走りにレジへと向かう。毎日のことだが行って早々長蛇の列を見ると少々ウンザリしてしまう。
「お弁当は温めますか?」
考え事をする暇もないくらい、客の山場は時間とともに繰り返しやってくる。
「今日も1日よく働いたな。立ちっぱなしだから足がかなり疲れるだろ」
1コ上の先輩が時々労いの言葉を掛けてくれる。
「客足が切れない時なんてトイレも行かれずホント辛いっすよね」
「そうだな、サラリーマンやOLなんか休み時間が一緒だからレジも集中するしな」
「ですよね-」
時計の針は21:00になり深夜のスタッフにバトンタッチ。
「じゃ先輩、また明日お願いしまーす」
バイトの帰り道ふらっとレンタルビデオ店に寄り、前から探しているお目当てのCDを探した。CDを見つけると家までの平坦な道を冷たい風に吹かれながら少し足早に歩いた。
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