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父が出て行ってから2年くらいしたある日、優しそうな男性をぼくに紹介した
その人は母のことも僕のことも大切にしてくれて、母の病院にも付き添ったりしてくれるとてもいい人だった
これが安らぎの生活か、と感じたほどだった
そうして余命の3年目の年は変わることなく過ぎていき、もしかしたらしあわせな気持ちが癌をやっつけてくれるんじゃないかとさえ思えた
4年目のある日、その思いは無残にも崩れ去り、母の容態が急変した
母は急逝する、ぼくは19歳だった
四十九も終わってその人とぼくは、母のいないことを徐々に受け入れて行く日々だった
それが母が亡くなって100日を過ぎた頃、あの衝撃の言葉をぼくは、聞くことになる
その人はぼくに
君のお母さんの事は本当に好きだったよ
だけど君の事を可愛いと思ったことは一度もなかった
むしろ、嫌いだった
と言ったんだ
えっ、あんなに可愛がってくれたし、優しくしてくれていたのに?
それはお母さんがいたからだよ
ぼくはその日を境に眠ることができなくなったんだ
眠っても浅くしか眠ることができなくなった
人間不信になった
ぼくは母が喜んでくれた難関大学に入学していたが退学して、趣味だった音楽の方にのめり込んで行った
人生なんてどうでもよくなっていたから
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