アニーの場合

不思議な事件だった。
いや、結果的には事故なのか？
神保警部はそう思った。

発端は、3月下旬のある夕方、東京都文京区に住む比較的裕福な家庭からの警察への通報だった。

小学生の娘が、契約しているライフサポートサービス社から派遣された養育係のアニーにさらわれた、というものだった。養育係は裕福な家庭を中心に広まりつつあった。

奥さんが夕方5時過ぎにママ会から家に戻ると、
娘とアニーがいなかった。鍵は掛かっていた。心配になり外に出たら近所の人が娘とアニーが小さなボストンバックを持って出掛けて行ったと言う。6時を過ぎても帰らないので、仕事中の旦那に連絡をしたら警察に届けるように言われたので連絡した、との事だった。

警察は養育係も一緒だし、単に出掛けているだけでは、と言ったが、今までも家を空ける時は、たとえ近くのコンビニでも、必ずアニーから彼女に連絡が入るのに、その時は連絡が無かった、そして今も連絡が取れない、だからアニーが娘を連れ去ったのだと、主張した。

事故にあったのかと警察でも調べてみたが、そのような情報は無かった。