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「はい、承知しました。そのままお休み下さい」
「アニー、ずっと一緒よ。側にいてね」うわごとの様に言った。
「はい、お嬢様、アニーはずっとお嬢様と一緒にいます」
その言葉を聞いて、安心したように智子は寝入った。
アニーは最初、なぜ智子がこんな事をするのか理解出来ていなかった。いや、今も解っていなかった。しかし、この逃避行で解った智子の自分に対する気持ちは嬉しかった。こんなにも自分を慕ってくれる智子が愛おしかった。だから、無条件に智子に尽くそうと決めていた。精一杯、智子の為を思って行動してきた自分が誇らしかった。
アニーは崩れた入口の方へ行き、落ちた岩の配置を詳しく見てみた。押してもびくともしなかったけれど、外が見える隙間の岩を崩せば人が通る程度の穴は空きそうだった。
アニーはもう一度、智子の所へ戻り、智子を抱えて岩陰に移した。そして入口にとって返し、先ほど見つけておいた岩の間に身をかがめた。首を伸ばし智子の方を見やった。
岩陰に隠れているが、気配はわかった。
『お嬢様、アニーはいつもお嬢様の心の中に。どうか幸せになって下さい』
アニーは、そうつぶやいた。智子と過ごした日々が懐かしかった。
そして、足を踏ん張り、岩を力一杯押した。
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