アニーの場合

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たとえばエスカレータでも、誰に教わらなくても、何度か文句を言われたら、すぐに大阪では右側に東京では左側に立つことを覚えた。 ・・・ただ、すべてそれは知識ベース(学習や経験で蓄えた知識のデータ)だった。経験をデータベース化して、いわば、何かを問われたら適切と思われる知識を引き出し、反応をするだけだった。 『好きだ』と言われれば、『私も好きです』と返したが、それは、そう返した方が無難だという知識で返しているだけで、好きという感情があるわけでは無かった。 もし、すれっからしの中で経験を積めば、『好きです』と言われたら『馬鹿野郎』と返す事を覚えたに違いない。 ところが、今回の一連の事件(事故)では、刑事や智子の証言から、どうしてもそれだけでは説明のしようのない行動をRC3301型-No.2508は取っていた。 四つ葉電工の主任研究員、篠原はRC3301型-No.2508がどの様な知識ベースを蓄え、それを元にどう判断したのかを知りたくて、ICチップを検証したが、どうしても解析できない、小さな正体不明の知識ベースができあがっていた。     
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