アニーの場合

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「そう、怖がって後ずさりして、でも、『コンニチハ、ハジメマシテ、トモコオジョウサマ。アニー、ト、モウシマス。ヨロシクオネガイシマス』 そうご挨拶したら、『日本語しゃべれるんだ』と言って近寄って来てくれたのですよ。とても可愛いかったですよ」 「あら、今は憎たらしい?」 「いえ、そんな事は・・・」アニーが慌てて言った。 「アニーも日本語上手くなったよね」 「ええ、ネイティブは英語なので、日本語一所懸命勉強しました。日本語は難しいです」 アニーのネイティブって英語なのか。知らなかった。と驚いたけど、直ぐに別れの事を思い出してふさぎ込んだ。 しばらく考えていた智子が急にアニーに言った。 「家を出る」 「え? どこへ行かれるのですか、お嬢様」 「アニーと一緒に家を出ます。家出です」 「それはダメです。ご主人様と奥様が心配されます」アニーは驚いて即座に拒否した。 「アニー、去年契約が変わっていたわよね。私の指示をきくというように」諭すようにゆっくりと智子が言った。 「あなたは私に意見する事はできるけど、それでも私が指示したら、そのとおり動かなければいけないのよ」 その通りだった。 従来は両親の指示で智子の世話をする契約だったので、智子の言うことを必ずしも聞く必要は無かった。しかし、利発な智子を見て、去年、両親が契約内容を変更していた。     
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