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「山の方の道を行きましょう」智子が言った。
「あなたは目立つから、これじゃあ、人気のあるところを歩けないわね」
「すみません、お嬢様」
「別にあなたのせいではないわ。さあ、行きましょう」
2日目は、川から少し離れた山道沿いの小屋に入り込み、夜を明かした。智子の小さなボストンバッグにはプーさんの人形とお菓子が詰め込まれていた。そのお菓子は2日目に食べ尽くした。
「お金が要るわね」
3日目の朝、智子が言った。
「しかし、切符を買ったのであまり手持ちがありません」
智子は少し考えて「これを売りましょう」そういって持ってきたLVのボストンバッグの中身を取り出して空にし、シャネルの腕時計を外した。
「しかし、その時計は奥様がこの前にお嬢様の誕生日にプレゼントして下さった高価なものでは?」
「この時計は60万円だって。ボストンバッグも20万円よ。小学生に馬鹿みたい」
「そんな大切なもの、手放してはダメですよ」
「お母様が好きなだけ。こういう物は頑張った人が持ってこそ価値があるの。私なんかが持つと単なるイヤミだわ。でも、ここでは、売れないわね。吉祥寺に行って、これをお金に換えてきます」
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