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アニーは会社の規定として思想や宗教的な内容は一切教えてこなかった。しかし養育係として、世の中の偉人と言われる人々の伝記などは教えてきた。智子はその中から、本当に価値のあるもの(事)は何かを漠然と認識しているように思え、心の中でつぶやいた。『さすが、お嬢様』
「解りました。吉祥寺に参りましょう」
「ダメ、アニーはここに残って」
「それは出来ません。養育係としてお嬢様を一人で行かせるわけには行きません」
「いいから、アニーは写真が公開されているのよ。すぐに見つかってしまう。この小屋を出てはダメ。もし、誰かに見つかっても喋ってはダメ。いいわね」
「養育係として、お嬢様を危険な目に遭わせることは容認できません」
「あなたと一緒に出歩く方が、危険なの。養育係として、より私が安全な方を選びなさい」
「・・・・・・・」
「返事は?」
「・・・・ハイ、承知しました・・・。でも・・・」
「大丈夫だから、心配しないで」
これだとどちらが養育係か解らない、とアニーは思った。でも、確かにこの数日の智子の成長は素晴らしかった。自分が得た情報を元に、てきぱきと物事を判断して行く。とても小学生とは思えなかった。
智子は手を振りながら川沿いの道を下っていった。
待っている間、アニーは落ち着かなかった。
夕方になって、智子がコンビニの袋をもって戻って来たときは、言いつけを忘れて思わず小屋を飛び出した。
「お嬢様、よくご無事で」
「大げさね。日本のそれも電車で1時間ほど移動しただけよ」
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