アニーの場合

9/19
前へ
/19ページ
次へ
「でも・・・」アニーは泣けなかったが、泣きそうだった。 心配と安心、それ以外の心から敬愛するような気持ちがふつふつとわき上がるのをアニーは不思議な感覚で味わった。 「ねえ、聞いてよ。非道いのよ。ボストンバッグは2万円、腕時計は4万円にしかならなかったのよ」 「え? どうやってお金に換えられたのですか?」 「フリーマーケット。最初はチケット店(質屋)に持って行ったんだけど、未成年はダメだって断られたの。丁度フリーマーケットやってたので、その中のお兄さんに頼んで一緒に置かせてもらったの。そして、何人かが見に来たけど、私が小学生だから怪しんで誰も買ってくれない。その中のひとりのおじさんが子供だから信用できないけど、2万と4万なら買ってもいいって。非道いと思ったけど、どうしてもお金が欲しくて売っちゃった」 「それは非道いですね。ただ、相手の弱みにつけ込む。それは世の中の道理でもあります。悔しいと思っても良いですが、恨んではいけませんよ。それに、世の中には正当に相手を評価する、そういう人もいるのですから」 「おや、いつもの調子が戻ってきたわね。家を出てから元気なかったのに。そうね、私は常に相手を正しく見て、正当に評価したい。そんな大人になりたいわ」     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加