約束の金曜日

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 彼女は忙しそうにティッシュを何枚も重ねて長方形に折ると、パンティの底に生理用ナプキンのように置いて下着が汚れるのを防いだ。  パンティを上にあげて服の乱れを直す仕草がまた私の欲情をそそった。まだ終わったばかりなのに、いつもと違って下半身はパンパンになっているのだが、彼女は、もう今日の目標は達成していて満足そうだった。  さすがに「もう一回やりませんか?」と誘うことはやめた。  予定の時間から大幅に遅れてしまったからなのだろうか、尾上さんはセックスの余韻も残さず、てきぱきと愛液でびっしょりと濡れたテーブルをウェットタオルで綺麗にすると、さっさと帰り支度を始めた。  セックスした後の男女の精神的な動きが逆になったみたいで滑稽だった。  私はもっと抱き合ってゆっくりとしていたかった。  尾上さんは身体やテーブルをふき取ったティッシュの入った袋を差し出すと 「すみません。これはここで捨ててもらっても大丈夫でしょうか?」と申し訳なさそうに尋ねてきた。 私は快く受け取ると「では、また来週もお願いします。主人が待っていますので急いでで帰ります」と彼女は言い残しドアを出て行った。    ドアまで見送って戻ってくると、すぐに時計を確認した。まだ次のクラスまでは1時間あった。大きく息を吐き出すと、セックスの後の特有のけだるさを感じながら終わったばかりの部屋にたたずむ。  テーブルの上にはお金の入った紙袋とさきほど尾上さんが渡した白いビニール袋に入ったゴミの2つの袋だけがのっている。紙袋を逆さまにすると100万円の束が5つテーブルの上に不規則に落ちた。  札束を一つ一つ眺めるとお金の匂いがほのかに漂い。ゴミ袋から漂う二人の体液の匂いと混ざってなんともいやらしい匂いに変わった。  両手で札束の感触を楽しみ、頭の中では先程の出来事が駆け巡る。    正直、彼女のビジネスライクな行動は物足りなかった。  いや、物足りないというか、それによって自分の欲求がどんどん拡大してきていることを感じた。自分の尾上さんに対する気持ちがどんどん高まってきているのを、必死で打ち消そうとしている。  彼女が去り際に言った 「主人が待っていますので急いで帰ります」と言う言葉があたまの中でグルグル回った。   何故、彼女はあのようなことを言ったのか?   何の意味も無いのかもしれないが?  小さいことがとても気になった。  この後会って何をするのだろうか?   普通に会話ができるのだろうか?   今日の報告はするのか?   そしてやはり夜は愛し合うのだろうか?   そのようなことを考えていると頭が破裂しそうだった。  もらった謝礼の500万円より専ら自分の関心事は尾上章子で、もっと深く彼女を知りたくなった。   その後の高校生への授業にはあまり集中できず、その日は夜遅く11時過ぎに帰宅した。 正直なところあまり妻と顔を見合わせたくなかった。  話しているときの自分の表情にあまり自信がなかったからだ。  家の中に入るとわざと小さい声で「ただいま」と言ってみる。  たぶん寝ているのだろう。  静かに部屋に入ると浴室に直行した。匂いが残っていないか心配だった。さっさと服を脱いで急いでシャワーを浴びるとやっと安心した。石鹸で身体を念入りに洗った後、トランクスとTシャツを着て妻と息子の寝室を覗くと二人とも熟睡していた。  起こしてはいけないのでそのまま隣の部屋に行くと静かにベットに入った。
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