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そんなことを、何万回と繰り返していると、いろんな意味で、私が地獄に向かって落ちていく覚悟を持ち始めていることに気付いた。
金曜日ごとに私と章子の愛は深まっていく。
今回、章子は言葉攻めにうれしそうに反応した。耳たぶを甘噛みし、卑猥な言葉達をささやき問いかける。
「どうしてこんなに濡れてるの? すぐここはよだれ垂れちゃうんだね? どうして?」章子は、こういったねちっこい質問をすると、息を荒くして苦しそうにもだえる。そして口を塞ぎたくなるような大きな声で悶えていく。
正常位からバック、そして騎乗位といろいろな体位を楽しみ、時折腰の動きを止めて焦らし、腋の匂いを散々嗅いだ後なめまわした。
狂った動物のように抱き合って、彼女の中に放出した後、抜きもしないで抱き合う。彼女の膣の中が痙攣するようにピクピクするのが心地よかった。
「もう私耐えられない」
繋がれたまま章子は言った。
「旦那とは相変わらずなの」
正直なところ彼女があまり上手くいっていないことがうれしかった。
「左腕思い切り殴られたの」
殴られたという一言にドッキリした。先程のうれしい気持ちが一瞬で不安に変わった。幸い彼女の左腕に一目で分かる怪我はないようだが、今まで夫からの暴力に関しては、章子から聞いたことがなかった。
「暴力、、、ふるわれてるの?」
聞いた後、いたたまれなくなり、中に入っているまだ少し硬直したモノを静かに取り出した。章子は両足をペタンと足をひろげて座り込むと苦痛いっぱいの顔で静かにうなづいた。
「危ないよ! 離婚しないと!」
「でも」
彼女も離婚するまでの勇気が無いのだろう。言葉に詰まった。
私は章子の返事を待つ。「私ね、わたしね」そこから話が進まない。私は章子の身体を再度抱きしめた。
「私ね、怖いの、最近彼がすごく私を邪魔者にしてて、とにかく言葉や暴力がひどくなってきて」
章子は相当追い詰められているようだった。
「これ見て!」
言うやいなや彼女のブランドバックを乱暴に引き寄せて何かスカーフに包まれた物を目の前に取り出した。
「これは?」と聞いたが、彼女は何も言わずに私に包みを突き出した。
あけてみて!ということらしい。スカーフを開いていくと、見たことが無いとても大きなサバイバルナイフが出てきた。刃の部分だけで20センチもある頑丈なナイフは冷たくてずっしり重かった。
「これでどうするつもり? まさか、、、」
あまり聞きたくなかったが私は確かめずにいられなかった。
「もちろん私は使いたくないわ。でも夫が本当に私に暴力をふるってきた場合は、これで威嚇しようと思うの」と彼女は自分を奮い立たせるように言った。
このときばかりはいつもピュアで美しい彼女の顔は、まるで鎌を研ぐカマキリのように妖しく見えた。
「別れたほうがいいよ。別れてくれないか」
もう章子に対する気持ちを押さえ込むことはできなくなっていた。
「俺と一緒になろう!俺が君を守るから」
自分の覚悟ができているのか確認するにはとても良い機会だった。
「でも、でも」
章子は涙を流しながら私の申し出を断ろうとしているがそれをくちびるで止めた。
私が離婚することを心配している章子の優しさは痛いほど分かった。彼女にしゃべらせて湧き上がった気持ちをおさえられるわけにはいかなかった。
二人はしばらく抱き合った後、二人の将来についてまた来週の金曜日に話し合おうということで別れた。別れ際に、泣きながら何度もおじぎする章子がどうしようもなく愛しかった。
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