モエ

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モエ

 アメリカでは寮に入り全然違った日常を楽しんだと言いたいとこだが、授業についていくのが大変すぎて勉強ばっかしていた。  大学にはアジア系はたくさんいたが、明らかに日本からの留学生は少なかった。クラス中だけでなく休み時間も含めて、一日中全ての会話を英語で行った。そのほうが英語の勉強になるであろう、と考えた結果そうすることにした。  留学から3ヵ月程たったある日、新しく取ったフィロソフィー200というクラスに「モゥエィ」という女の子が入ってきた。黒髪の長い髪で小さいまるい顔に大きな瞳でアジア系・英語がペラペラすぎるところを見ると留学生ではなく現地の人とも思える。  彼女は気軽に私に話しかけて来てよく話すようになった。  私も彼女がかわいいのと同時に、瞳の色が同じなので何か話しやすさを感じた。  最初は勉強のことばかり、特に私はクラスの内容が半分くらいしか理解できないこともたまにあったので、クラスの後に彼女に質問すると彼女が的確に教えてくれるので助かった。    よく話し込んでいくと彼女が日本の東京から来ている日本人の「モエ」ちゃんというのが1ヵ月後にようやく分かった。  モエは私が日本からの留学生だと言うのは話す前に顔を見て分かっていたらしい。  その当時はロン毛が流行っていたのだが、その日本で流行っている通りのヘアとファッションスタイルと、あまりいけてない英語の発音で私が日本人なのは簡単に見抜かれたようだ。  一方、私が彼女が日本人だと見抜けなかったのは、モエが中学からアメリカに留学しているので、顔と雰囲気がアメリカに染まり、あまり日本から来た留学生っぽくないからかもしれない。   なんといえば言いのだろうか?  いつもバックとかポーチとか持ってないし、もし、ミニスカートはいてきても、ハンカチを置いて見えそうな三角形の部分は隠さないし、ごまかし笑いも照れ笑いもしない。   お互い日本人なのが判っても、私達は英語で話すことを続けた。お互い話し合ったわけではないのだが、この方が勉強の為にも良かった。  モエは、キャンパスでもモテていてよく男達がちょっかいをだしていた。遠くから口笛だけ吹く野次馬的なものから、なんとか友達になろうと教科書を見せて、 「君と、同じクラスとってたけど質問ある」とか話しかける奴等とか、  真面目に一目ぼれしたから電話番号渡すとか、  ここはアメリカだけあってなかなか積極的なアプローチが多かった。  モエは私を見かけると、その一生懸命の男達をあっさりと振り切って、笑顔で私のほうに駆け寄って来る。  男達にとって私のことは、たぶん。 「なんだあの男は!」という感じなのだろう。  実際走りよるモエを追いかけてきたある男は、私に「お前はこの子の彼氏か?」と不満そうな顔で聞かれたこともある。  そういうときにいつもモエの方を見るのだが、聞こえているはずなのに、何も言わずに遠くを見ている。  そういう意味では、意地悪で卑怯でずるいのだが、顔がかわいいので何も言えない私がいた。  モエいわく、彼女には彼氏がいて、違う大学に行ってしまったらしい。  見たこともないモエの彼氏にはちょっと嫉妬していたので、逆にあまり詳しく聞く気にもなれなかった。  私はまるで、モエの彼氏が雇ったボディガードかよ? と言いたいところだったが、 ボディガードはなんかお洒落な感じがするので、あえて「管理人」と言っておいたほうがいいのかもしれない?  とにかく、私のことを彼氏と勘違いして、明らかに悔しそうな顔している男達の目線が、私に刺さってくる。ある意味男達が、気の毒でしょうがなかった。  悪い言い方をすれば、これらの男達は、彼氏のいる小悪魔な小娘に翻弄されているからだ! 私もその一員かもしれないのだが?
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