AYA

1/2
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/51

AYA

 志穂は妊娠してそれから出産をして2年くらいは性欲が無い時期があった。なので私は何も求めることができなくなっていた。もし私が無理に求めようものならば、涙を流して嫌がった。最初は妻からの性生活の拒絶と言う事実に動揺したが、インターネットで調べてみると、妊娠して出産した女性にはそういうことが起こりえることを知った。  こういう時は、父親としてそのくらいは我慢すべき、と思うのだが、残念な男である私の行動は違った。  セックスを拒絶され、大きな孤独感も味わった。  志穂が子供に愛情を注ぐたびに、自分に向かう愛情は少なくなっていく。  結婚当初は、自分だけを見つめてくれた妻と言う存在が「母親」と言う存在に変わっていくのが耐えられなかった。  ある日を境に、都合の良い理由で一度だけ私は暴走した。  塾の開業のプレッシャーと、性生活の拒絶からくるストレスでネット掲示板を見るようになった。その掲示板では、ビデオチャットで話をする相手を探す為のものなのだが、そこでその女性と知り合った。  AYA というPC上のニックネームしか分からない女と、最初はチャットだけで盛り上がった。話していくに連れて、彼女が自分よりもずっと若いことに気付いた。  大学一年生だった。19歳だと彼女は言った。  AYAは私がアラフォーというのには全くこだわらず、あけっぴろげにひとしきりいろんなことを話す。  唐突に「私は処女なんです」とチャットした。そしてセックスに興味があるという。 「おじさんはどうですか?」と返してくる。  相手がまだ19歳ということへの罪悪感と、これは浮気なのか浮気ではないのかという自己判定に悩んだ。ただ時間が経つにつれて、いまだかつて経験したことがない興奮と好奇心で二人は盛り上がり、あっという間にボイスチャットに進んでいった。   AYAは19歳らしいなんとも言えない純粋な透き通った声で話しかけてくる。  恥ずかしながら喋っているだけで下半身が熱くなり、彼女に見えないことをいいことに下半身を手で触って刺激した。  エスカレートしたのは私一人ではなかった。  二人は声だけで愛し合うようになった。  声だけでお互いの身体を慰めあった。  AYAの未熟でぎこちないところが魅力であった。  この勢いで映像チャットで愛し合うのも時間の問題かと思われたが、それには以外と時間がかかった。AYAが顔を私に見せることを恥ずかしがったことが理由だった。   しかし、それは私のほうにも同じことが言えた。20歳くらいの年齢差を考えると、AYAが私のことを気に入るとは思えなかった。でもどうしても自分の欲求を抑えることができずAYAを粘り強く説得して、いよいよ顔を見せ合うことになる。  これは浮気なのかそうでないのか? という問題が再度浮上してきた。  しかし、これは実際に会って性行為をするわけではない。  飢えた私には浮気をするという決断をするのは難しくなかった。  19歳の女の子と顔を見せ合って愛し合うという罪悪感たっぷりで好奇心に満ちた遊びをする機会を、くだらない理性で逃したくなかった。  でも、どこか罪悪感をぬぐい切れない自分が存在した。  それを振り払う為に、思い切りAYAに「自分は結婚している」とチャットで告白した。 返事を待つ間、本当の恋愛のように緊張をして汗ばんだ。  彼女は一瞬だけとまどったようだったが「大丈夫」とだけ返してきた。  チャットの文字だけだったので、そこで彼女がどういう顔をしていたのかは知る由もなかった。自分の都合の良い付き合いだけをしたかった。そしてそれがAYAの希望と一致していることを期待した。なので私達二人は会うべきではない。  つまり、性欲の解消はしたいが、お互いの理性をコントロールして、暇なときにビデオ会話だけで済ませるようにしたかった。間違いを犯したくはなかった。  ここで小心者の私は、自己防衛の為に自分の要望をチャットで掲示した。  ★真剣なお付き合いはできないこと  ★絶対に会わないこと  ★どちらかが辞めたいときに辞めても良いこと  3つのシンプルな条件は自分の欲望を抑えることにも役に立つと思った。  AYAは「いいよ」と一つ返事で了承した。私はこの擬似恋愛がエスカレートしないことに安堵した。  しかし皮肉なことに、そこから二人の特殊な恋のスピードは止まらなくなった。仕事の合間に暇を見つけてはビデオ通話をして盛り上がった。  ひとしきり、最近あったことなどの世間話をした後、話の内容は徐々に性的なことになっていく。いちおう大人な私は、何もしらない女の子にいろいろな情報を教え込んだ。   好奇心の塊だったAYAは、ソープランドに行った話しや、ストリップに行った話、私の初体験の話などを喜んで聞いた。そして一つ一つのプレイの詳細を知りたがった。説明が進むにつれ二人は興奮し、そして最後にはお互いの身体をビデオチャットで映しだし、擬似的に愛し合った。パソコン越しに見る彼女は美しく、そして初心で純粋だった。  やってはいけないことだとなのは分かっているのだが妻の志穂と比べてしまう。  声に出し方、感じ方、胸の大きさ、毛の生え方、まだ触ってないが肌触りの感触、そして中の感触。二人の違いを見つけてはそれで喜び快楽を得る。そして最後の放出前の快楽。  そしてその後の脱力感がじわじわと会えないむなしさに変わっていく。快楽と孤独のコンビネーションは「★絶対に会わない」という二人の誓いを吹き飛ばすには充分だった。
/51

最初のコメントを投稿しよう!