不可能な抵抗

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城田(しろた)先生、俺酔いやすいんで一番前の座っていいですか?」 そして今、バスに乗り込んだんだけれど。 「あら、いいわよ。じゃあ私はその後ろに座るわね」 担任の先生である城田先生に、一番前の席を希望した智也。 いや待って、確実危険じゃん。 せめて城田先生が隣に座ってくれないと。 けれど私の願いもむなしく、本当に私たちが一番前でその後ろに城田先生が座るという状況になってしまった。 そんな私たちの席順を見て、男子生徒が騒ぎ出す。 「智也ずるすぎるだろ!」 「独り占めしやがって!」 ブーイングの嵐。 このまま席移動してくれないかな、と淡い期待を抱いていたけれど。 「これもくじ運だよな」 智也は悪そうに笑い、その姿を見た女子はきゃーと悲鳴をあげ、男子も黙る。 「イケメンは何言ってもかっこいいってなんなんだよ」 「俺たちの負けだよな」 「やばくない!?私もあんな意地悪そうに笑われたい!」 高校生はこの表情にもときめくの? 残念ながら私は、一ミリたりともときめかない。 そこがもうおばさんだ。 「じゃあ出発しますね」 バスの運転手さんがマイクを通してそう言い、出発した。 とりあえず大人しく窓側に座る私だけど、今考えれば少しおかしい。 「ねぇ、酔いやすいのになんで窓側座らないの?」 「んー?一番前なら大丈夫なんで」 引っかかったな、とでも言うようにニヤリと笑う智也の表情は私にしか見えない。
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