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とりあえず、なるべく智也から離れて窓の外を見る。
どうしてこうなった。
せめて始業式の日に戻りたい。
そしたらもっと智也のこと警戒して、こんなことにならずに済んだはず。
なんて思っていたら、突然右手がぎゅっと握られる感触がした。
見ると、智也の左手が私の指に絡めてきて。
当の本人はというと、智也は通路の向かい側にある窓の外に視線を向けていた。
まるで私と何事もないかのように。
そんな智也を女子生徒たちが絵になると言って騒いでいた。
だから私は何もできずにいて。
頑張って離そうとするも、力が強くて敵わない。
仕方なく諦めて大人しくする。
智也も何も言わずに黙って、私の手を握っていた。
窓の外を眺める横顔が見えるけれど、少し色気さえ感じてしまうくらいの大人びたかっこよさ。
「中谷くん、写真撮っていい?」
「その姿撮らして!」
「は?なんでだよ、恥ずかしいだろ」
女子生徒がそんな智也をカメラに収めたいと言った。
確かに周りの誰もが見惚れてしまうくらいだとは思うけれど。
その後に恥ずかしそうに笑い、見た目よりも幼く見える智也のギャップが、私を含めた女たちの心を掴んでいた。
今のは、ずるい。
あれはさすがの私もドキッとしてしまった。
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