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すると今度は、ゆっくりと智也の顔が近づいてくる。
もしかして、ここでキスされる?
反射的にぎゅっと目を閉じる。
けれど、一向に唇が重なる気配はない。
なんて思っていたら、突然耳元で低く囁かれた。
「そんな可愛く目閉じて、構えてさ………何期待したの、先生?」
これも智也の罠で、簡単にはまってしまう自分が悔しい。
それ以上に、このうるさい鼓動が早くおさまってほしかった。
それに、いつもなら逃げてた私。
けれどどうして、今は逃げなかったの?
今日の私、明らかにおかしい。
まあここはバスの中。
逃げ場はないから仕方ないと自分に言い聞かせる。
「顔、赤いですよ。もしかして熱ありますか?」
一応敬語を使う智也だけど、言葉は私を陥れるように攻めていた。
後ろには城田先生だけでなく生徒もいる。
そんな中でこの状況には限界があった。
「もう、やめて…」
振り絞る声でそう言うと、突然智也が視線をそらした。
「とも、や…?」
小さく彼の名前を呼ぶと、彼は私から離れ、片手で顔を覆う。
もちろん手は繋がれたままだったけれど。
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