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「その顔は反則です、先生」
少し智也の頬が赤い。
どうして彼も照れているのだ。
「反則って…」
「我慢しようって思ったのに、先生は俺をかき乱すんですね」
「な、何言って…」
「静かに」
智也の人差し指が、私の唇に添えられる。
口を開かせないように。
「大人しくしてくれないと、キスしにくいです」
「…っ!?」
さらっとそう言った智也。
けれどその声は、バス内に流れる音楽や生徒の話し声にかき消される。
「さっきみたいに、目を閉じてください」
そんな優しく敬語を使ってるくせに、下心が丸出し。
きっと言う通りにしてもしなくても、智也は私にキスをする。
諦めるしかない。
私は素直に目を閉じた。
そう、これは諦め。
決して智也の言う通りにしたわけじゃないのだと思い込む。
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