1433人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
智也の吐息がかかり、鼓動が速まる。
おかしい、この気持ちはもう昔に置いてきたはずだ。
それなのに、どうして───
「……ん」
そっと優しく重ねられた唇。
思わず彼の服を掴む。
この気持ちを抑えるように。
頭の中で何度も否定した。
そして、唇の温もりが離れていく。
「続きは今日の夜にしてやるよ。
綾ちゃん、まだ物足りないだろ?」
わざと、甘く耳元で囁いたかと思うと、私を見つめてくる智也。
その表情は真剣で、さらには美しい獣のようで───
「反則なのはどっちよ…」
その声は、バス内の雑音へとかき消された。
最初のコメントを投稿しよう!