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目的地に着き、城田先生が生徒たちを誘導。
私は忘れ物がないかバス内を調べていた。
とりあえず智也から解放された私は、その間に心を落ち着かせる。
『続きは今日の夜にしてやるよ。
綾ちゃん、まだ物足りないだろ?』
一番後方の席から順番に見ていくけど、頭の中で繰り返される智也の言葉。
物足りないって何よ。
人を欲求不満な物言いして。
それに夜って?
そんなのできるわけない。
生徒ならまだしも、先生と夜に会えるわけないじゃない、バカじゃないの。
なんて思いながらも、智也ならやりかねない。
ああ、これじゃあ完全に智也の思うツボ。
「やっぱり先生でしたか」
「……え?」
突然声が聞こえ、思わず振り返る。
そこには、バスの運転手さんの姿があった。
「すいません、見るつもりはなかったのですが……つい見えてしまいました。
あの隣に座ってた男の人って生徒ですよね?
先生と生徒の恋ですか、いいですね。両想いなんて」
そう言われ、理解した。
バスの運転席からは私たちが見えていたのだと。
途端に恥ずかしくなる。
見られていただなんて、恥ずかしくてたまらない。
でも両想いなんかじゃない。
一方的なもので、私は振り回されてるだけ。
そう、振り回されてるだけだから───
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