切なさと甘さ

2/20
1395人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
「はい、席についてー」 三時間目、国語の授業で智也のクラスに行く。 けれど教室はいつにも増して騒がしかった。 その理由はただ一つ。 「先生聞いてくださいよ!ついに智也に彼女ができたんです!」 「……え?」 それはあまりにも衝撃的だった。 「違うクラスの女の子なんすけど、それがすっげぇ美女で」 「智也、お前は女に恵まれすぎだぞ!」 そうからかわれる智也だったけれど、彼はただ「うるせぇ」と言うだけで否定はしない。 恐らく本当なのだろう。 けれど、どうして? どうして智也は、彼女なんか─── いや、何動揺してんの。 私に智也の恋愛事情なんて関係ない。 所詮、恋愛なんてそういうものだ。 飽きたら終わりなんだって。 「恋愛の話は休み時間にして。 授業始めるわよ」 「ちぇ、黒崎先生も谷原先生といい感じなんですよね? 早く付き合ったらいいのに」 「そういうことを言わないの」 バレないように。 胸が痛むのがバレないように、私は必死でいつもの自分を演じた。 そうだよ智也は高校生なんだから彼女がいて当然。 だから私には、関係ないんだって。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!