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川田が…
亡くなった…。
俺は、ぼぉっとした頭でベッドに横になり、
病室の天井を見詰めた。
「………」
ふと…さっきの木村の話を思い出す。
昨夜の川田は…
一晩中、『助けて…助けて』と…
この病室で言い続けていたのだと言う…。
その時の…
川田の気持ちは…
一体、どんなだったのだろう…。
火傷の激しい痛み…。
そして、自分が死ぬかもしれない事への恐怖…。
「一晩中、『助けて…助けて…』と、言い続けていたなんて…」
俺は、たまらない気持ちになった。
全く!
こんな事になるんなら…
ドライブなんて、
行かなければ良かった!
何が!『絶好のドライブ日和』だ!
引き続き…
川田が言い続けていたと言う言葉が…
俺の頭の中で鳴り響いた。
『助けて…』
『助けて…』
と…
「えっ?」
不意に…
俺が、昨夜の夢の中で聞いた『あの言葉』が…
川田の言葉と、シンクロした。
『助けて…』
『タスケテゲロ…』
「あ…」
突然、俺の頭の中に…
『ある考え』が浮かんだ。
昨夜の川田は…
俺が寝ている右隣のベッドで一晩中、『助けて…助けて…』と言い続けていた…。
もしかして…
それを眠りながら、ずっと聞き続けてた、俺の夢の中に…
川田の『タスケテ』と言う言葉が、
そのまんま聞こえた通りに、出て来たんじゃないだろうか…。
「いや、でも…」
と、俺はその考えを否定する。
だとしたら…
何で『タスケテ』が…
『タスケテゲロ』と、
夢の中で『変換』されたんだ?
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