152人が本棚に入れています
本棚に追加
街明かりはまぶしく、肌を撫でる風も心地いい。
家に帰ったら、シャワーを浴びてラベンダーの香りで眠ろう。朝はパンとハーブティーをいただこう。
なんて幸せ。明日も元気に大学へ行ける。
そんな想像は、すれ違った男性が急にうずくまったことで途切れた。
みんな関わりたくないらしく、彼を避けて通り過ぎていく。私もどう行動すべきか迷った。
でも相手が、さっきまで一緒の場にいたあの魔法使いだと気付いて、立ち去れなくなった。
「大丈夫?」
声をかけると、彼はガードレールにすがりながら立ち上がった。私はそっと言葉をつなぐ。
「顔色、悪いよ。みんなはクラブに行ったの? 誰か呼んでこようか?」
相手は表情を険しくした。
「冗談じゃない」
自分が感情的な声を出したことに気付いたらしく、居心地悪そうに視線を逸らした。改めて、怪訝な顔でこちらを眺める。
「ていうか、誰?」
私は小さな笑みを漏らし、それには答えなかった。
彼がゆらりと細い通路に入り、段差に腰を下ろした。うつむいて額に手を当て、深い息を吐き出す。
かなり参っているみたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!