1話

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 方向が一緒なので、連れ立って歩くことになってしまった。公園のそばで別れようとしたら、相手に腕をつかまれた。 「ここまで来たら、回復するまで見届けろ」  返事も待たずに、憩いの敷地内へ入っていく。  普段は一匹狼のようなのに、今は、はぐれわんこになったみたいだ。私は乗りかかった舟だと諦めて、もうすこし様子を窺うことにした。  ベンチは長身の彼が横たわると、それだけで占められた。私がハンカチを濡らして戻ってきたとき、相手が身を起こして場所を空けた。 「いいよ、寝てて」 「座っとけ」  こちらをじろっと睨みつける。わがままな仰せには従うしかないらしい。  私は自販機で購入した清涼飲料水を渡した。彼が半分ぐらい喉に流し込んで、ホッとした息を漏らした。  沈黙が流れる。  居酒屋でいちばん遠かった存在と、一緒にベンチに座っているなんて。成り行きの奇妙さに驚かずにいられない。  超越然とした魔法使いでも、こんな日があるのかもしれない。そういうときに侍るのは、盲目的な崇拝者より、無知な村娘のほうが気楽でいい。  彼はハンカチを額に乗せて、ベンチに深くもたれかかった。私は尋ねる。
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