1話

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「やっぱり横になる?」 「気ぃ遣うな」 「そっちこそ」  言い返してやると、相手は不機嫌そうな目を向けた。私は肩をすくめて指摘した。 「ここで寝てたからって、あなたのなにが損なわれるっていうの?」 「……たしかに」 「布団は用意できないけど、枕なら?」 「提供してもらおうか」  傲慢な態度。たぶん、わざとだ。でも、こちらの提案に乗ろうというのだから、気まぐれでも構わない。  私が深く腰かけなおすと、彼は遠慮することなく、こちらの膝に頭を乗せた。  自分から言い出したくせして、不可解な事態に困惑する。相手はいろいろ投げやりになっているのかもしれない。  不意に、懐かしい感覚がよみがえる。つい彼の頭を撫でた。  魔法使いの身体がビクッと強張る。私は我に返って手を引いた。 「……ごめんなさい。実家の犬がよく膝の上で寝てたから、クセで。馴れ馴れしくするつもりはなかったの」  相手は気まずそうに目を逸らしたが、起き上がりはしなかった。  しばらくの沈黙のあと、彼の口からかすかな声が漏れた。 「べつに嫌じゃ……ない」  私はそれならと頭に手のひらを乗せた。
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