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「撫でると気持ちが落ち着くの。そうさせてもらってもいい?」
「……勝手にしろ」
私はホッとして相手を撫でた。
「小さいころから一緒に育ったの。大人しくていい子だった。うん、思い出すな……」
「いい子だった?」
「二年前、寿命で」
よけいなことを言った、というふうに彼は口をつぐませた。私は明るい色合いの髪を梳く。
「親戚の飼ってた犬が子供を産んで、一匹もらってきたの。仲良しの友だちが引っ越した、一週間後だった。タイミングは偶然だけど……私のために来てくれたみたい、って思った」
相手が聞いているか分からないけれど、やめろとも言わない。私は続けた。
「人懐っこい子だった。すぐに慣れて、私たちが家族だって分かってくれた。あっという間に、一緒にいることが当たり前になったの」
猫にケンカをふっかけられて、怪我をしたこと。散歩ではぐれたが、ちゃんと家に帰っていたこと。つらいことがあった日、寄り添ってきて和らげてくれたこと。
言葉にするたび、そのときどきがよみがえる。
彼は相槌も打たなかった。そういうのがちょうど良かった。
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