第1話 肉体と心

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第1話 肉体と心

 薄暗い部屋の中、可憐な少女が啜り泣いている。 「あなたは、何なの……?」  少女は目の前に立つ僕を見上げて、悲鳴のような声で問う。 「教えて……なんで、こんな惨い事を……私に」 「惨い? どこが惨いというのか。僕は君を想うからこそ、君をこの姿に造り替えたというのに」  僕は彼女に惨い事をしたとは思っていない。いや、世間一般では惨いというのか。  可憐な少女の手足を切り落とし、その代わりに美しい人形の手足を接合する行いは、惨いのだろうか。  僕はそうは思わない。今、目の前で醜い生身の肉体から美しく無機質な人形の手足を生やしている彼女は、この世のものとは思えぬほど美しい。  そして、筋肉も神経も通っていない形だけの手足の彼女には自由はない。目の前の美しい彼女は、僕と言う存在を求めなければ生きていけない。僕は、彼女に必要とされているんだと改めて感じる。  その事実を頭の中で何度も反復させ、僕は笑みを隠しきれずにいた。 「君は美しい、だからこそ、生身の肉体から解放されるべき高尚な存在なんだ」     
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