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だが、今の彼女ではまだ不完全だ。最終的には彼女の人格を保ちながら彼女を完璧な人形の身体へと造り替える。そのための技術を完成させるには、あと何年、何十年と時間がかかるか分からない。
だから、その間に彼女が俗世間のものに汚されぬよう、僕が彼女を保護したのだ。
だというのに、彼女は目を覚ましてから一向に泣き止まない。彼女を想っての行動だというのに……どうして。
「まだ傷が痛むのかい? すまないね、接合部がまだ馴染んでいないのか、もう少し我慢してくれ、すぐに君の身体にも馴染むはずだ」
きっと接合部が痛むのだろう。切断面にボルトを埋め込んで強引に人形の手足を固定しているから、その痛みで彼女は泣いているんだ。
けれど、人間の身体は案外、馬鹿だから、痛みでも何でもすぐに馴染ませてしまう、心配いらない。
「君が完全な『生き人形』になるまで、もう少し待たせてしまいそうだ。それまで、あともう少しだけその歪で醜い生身の肉体で我慢してくれ」
僕は彼女に対して申し訳ないという気持ちで一杯だった。
なぜなら、彼女を醜い生身の肉体から解放するためには、あとどれだけ時間がかかってしまうか、分からない。それまで彼女の魂を生身の肉体に縛っておかなければならないのだから。
僕はただ、欲しかっただけなんだ。僕の言う事には一切逆らわず、全てを受け入れてくれる完璧な肉人形。
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