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講義後、部活に向かおうとする茜を呼び止め、校舎裏へと呼び込んだ。そして、僕は彼女に思いを伝えた。緊張など微塵も無かった。何故なら、彼女と僕は結ばれる運命にあるのだとこの時点で既に確信していたからだ。
それに対し、茜は驚いていた。まぁ無理もないだろう、何故なら僕と茜が面と向かって話すのはそれが初めてだったからだ。僕は茜を知っていても、茜は僕の事を知らなかったのだ。
「ごめん、なさい……まず、私たち話すのも初めてですよね? というか、何処かでお会いしました……?」
「僕はずっと君を見ていたよ。君が気付いていなかっただけで、ずっとね」
茜は何故か困ったような、引きつった顔をしていた。彼女の事を知り尽くし、尽くそうとしているこの僕からの申し出を、何故か茜は喜ぼうとはしなかったのだ。
「君の事は何でも知っている。君にとって、僕以上の存在はいない。僕にとっても、君以上の存在はいない、つまり、僕たちは互いに求め合っている。優秀な君なら分かるだろう?」
僕は僕の知り得る茜の全ての情報を次々と羅列していった。住所、趣味、バイト先、出身高校……彼女の事で知らないことなど既に無かった。つまり、それが僕の茜への愛の重さを示している。これだけ茜の事を知り、愛を持つ男が僕以外にいるだろうか、いや、いるはずがない。だから……僕は茜にとって一番の男のはずであり、結ばれるべきだった。
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