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中川と梅澤は少しの間、無言で歩いていた。
中川は緊張してタイミングをどうするかで頭がいっぱいだった。
切り出すタイミングをうまく計るのだ。
「聡、今日はどうしたの。変ね。随分無口ね」
梅澤は中川の顔を覗きこんでくる。
「そ、そんなこともないさ」
智子の目の不振なの目をしているように見えた。軽くみえる、しかし鋭く疑っている。口元は赤い口紅をしているのだが今日は特に赤く見える。
日差しは木陰を挟んで相変わらず緩やかに二人の周りに光を注ぎこんだ。
中川と智子は目指した丘にたどり着いた。
丸太の椅子があり、二人腰を下ろした。
そこから街並み見渡せる。
中川が深呼吸をして腹の底から声を出そうと意識をあてた。大丈夫、自分を信じるしかない。ここまできたのだから、いける。
「実は話があるんだ。智子、君に聞きたいことがある」
真剣過ぎたのか智子は驚いている。
「急に大きな声を出してどうしたの、私も実は聞きたいことがあるの」
「え、何?」
中川は動揺した。
もしかして何か聞こうとしているのか。
中川は智子の言葉に戸惑った。
「智子が先に聞いてくれ。聞きたいことって何」
「実は中川君のことをもっと知りたくて」
智子にゆっくり体を近づけてきた。
中川はこれは抱きしめる合図だと思った。
今日は随分積極的だ。
この際だ。抱きしめてもいいかもしれないと思い、中川はゆっくり手を広げようとした。
その時だ。
智子はものすごいスピードで中川の手を掴み背中を回すと力強く、後ろに周り抑えつけた。
痛みが鋭く手に走った。
「な、な、何をするんだよ、智子」
智子は中川を抑えながらジャケットのポケットからピストルを取り出した。
「銃‼️」
「やっと見つけたよ」
「見つけた?」
「中川、お前だよ。私はずっと探していたんだ」
智子は急に豹変したかのように呼び捨てで呼んだ。
「探していた?」
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