458人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
競技場では王様から少し離れたところで見守る。
王様はぼんやりと立っているだけだ。
それから、興味がなさそうに王様は右手を上げた。
綺麗に魔法が発動する。
明らかに以前より、威力が増している様に見えた。
大して能力の無い俺でもそう思うのだ。
対戦相手も、それから、審判でさえも目を見開いて呆然としている。
神子と付き合っていた時でさえ、こんな圧倒的な力の差は無かった様に思う。
元々余裕で勝っていた風に見えたがそんなものとは次元が違う。
神子と別れた後、一人で研鑚を積んだという事だろうか。
俺を常に傍らに置いて以降そんな様子は無かった。
「すごいです。何でこんな……。」
俺が思わずそういうと、戦意を喪失して跪いた対戦相手をチラリと見た後、王様はこちらへ来た。
「小夜啼鳥が唄ってくれるからだよ。」
王様が言った。そんな訳がないのだ。
俺の歌は魔法をのせている訳でもないし、ましてや神子の様に特別な力がある訳では無い。
単なる歌でしかないのだ。
王様が俺を抱きあげる。
「これからも俺の為に唄って。」
「……はい。」
それでもこの人が俺の事を必要としてくれている限り、この人の元を離れることは無いのだろうと思った。
了
お題:二人が少しでも幸せにしている様子。
最初のコメントを投稿しよう!