小夜啼鳥は彼の為に唄う

3/3
458人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
競技場では王様から少し離れたところで見守る。 王様はぼんやりと立っているだけだ。 それから、興味がなさそうに王様は右手を上げた。 綺麗に魔法が発動する。 明らかに以前より、威力が増している様に見えた。 大して能力の無い俺でもそう思うのだ。 対戦相手も、それから、審判でさえも目を見開いて呆然としている。 神子と付き合っていた時でさえ、こんな圧倒的な力の差は無かった様に思う。 元々余裕で勝っていた風に見えたがそんなものとは次元が違う。 神子と別れた後、一人で研鑚を積んだという事だろうか。 俺を常に傍らに置いて以降そんな様子は無かった。 「すごいです。何でこんな……。」 俺が思わずそういうと、戦意を喪失して跪いた対戦相手をチラリと見た後、王様はこちらへ来た。 「小夜啼鳥が唄ってくれるからだよ。」 王様が言った。そんな訳がないのだ。 俺の歌は魔法をのせている訳でもないし、ましてや神子の様に特別な力がある訳では無い。 単なる歌でしかないのだ。 王様が俺を抱きあげる。 「これからも俺の為に唄って。」 「……はい。」 それでもこの人が俺の事を必要としてくれている限り、この人の元を離れることは無いのだろうと思った。 了 お題:二人が少しでも幸せにしている様子。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!